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栃木県那須町にあるスキー場付近で、27日午前、山岳部の高校生と先生が登山の講習を受けていた最中に雪崩に巻き込まれた事故は、8名全員の死亡が確認されるという最悪の結末を迎えてしまいました。「ラッセル訓練」という深い雪の中をかき分けて進む訓練中に雪崩に巻き込まれたことも判明。
栃木県教育委員会の発表によると、雪崩に巻き込まれた生徒が参加していた講習会は当初、27日の午前中、茶臼岳での登山訓練を行う予定でしたが、雪が強かったことから、現場で顧問らが中止を決めたといいます。
そして、その代わりに、午前8時頃からスキー場周辺で積もった深い雪の中をかき分けて進む「ラッセル訓練」を行っていて、この訓練には、教員と生徒が併せて48人参加。
生徒を5班に分け、引率の教員がつく形で行われていました。
この内の、県立大田原高校の生徒達のグループである1班が先頭でした。
その結果、この1班を中心に雪崩の被害に遭ったということです。
雪山での災害というのは、防ぎ用のない所もあり、これまでも幾度となくこうした事故は起きています。
ただ、同じような事が起きないように、再発防止の対策を練る等の対応が必要となるでしょう。
ラッセル訓練とは何?どんな意味?
「ラッセル」という言葉には、「交替で~しながら登る」という意味があります。また、ラッセル車なんて言葉もありますね。
ラッセル車は、除雪車両の一種で、元々はアメリカのラッセル社の名前に由来しています。
車両の前の方に、除雪板があり、進行方向の雪を掻き分けます。
登山では、深雪の中を雪を踏み固めて道を作りながら進むことという意味が。
そして「ラッセル訓練」とは、なるべく体力を使わずに、新しく降り積もった雪の中をかき分けながら進む技術を磨く訓練です。
日本山岳協会によると、ふかふかの雪を圧雪しながら進んだり、前の人が踏んだところを通るようにして、無駄な体力の消耗を防ぐためで、この技術を身につけるためには、相当な訓練を必要とするという事。
という事で、ラッセル車のように、雪山の雪を掻き分けて上っていく訓練の事を「ラッセル訓練」というのですね。
ラッセル訓練と表層雪崩との関係や影響は?
この「ラッセル訓練」を行う時には、「大雪注意報」や「なだれ注意報」が発令されていないか、確認する必要があります。このような注意報が出ている時には、決してラッセル訓練は行ってはいけないということです。
「冬山の登山」には必要な訓練という事で行われた今回の「ラッセル訓練」。
スポーツ庁は、昨年の11月に高校生以下の冬山登山は原則として行わないように指導することを求めています。
今回の場合は、「春山」という解釈のもとで、安全対策を習得させるために行われていた講習会。
現場の先生の状況確認に判断は委ねられていたといいます。
この件に対して、世界的登山家のアルピニスト野口健さんもこの様なツイートを残しています。
これは…。現場を見ていないので何とも言えませんが… しかし、昨夜から雪が降り続いていた中で、雪崩注意報がでていた中で、高校山岳部が雪上訓練をやる事に驚かされる。スキー場だっただけに危機感がなかったのだろうか。https://t.co/N15Mmpo7Lx #Yahooニュース
— 野口健 (アルピニスト) (@kennoguchi0821) March 27, 2017
「雪崩注意報」は一つの目安。雪崩注意報が発令されたからといって、全ての場所が同じように危険なわけではない。ただし「危険」か「セーフ」かを見極めるだけの力量が求められる。どんなに気をつけても時に遭難は避けられないが、しかし、今回の遭難は「避けられない遭難」であったのだろうか。
— 野口健 (アルピニスト) (@kennoguchi0821) March 27, 2017
コメンテーターの方が「高校山岳部は冬山登山は禁止しているはず」と。しかし「冬山」に焦点をあてる意味があるだろうか。「雪山」かどうかなら分かりやすい。しかし「冬」と限定するならば「日本の冬山はダメだけれど春のエベレスト登山OK」という事になる。そして今回の遭難は春山登山。
— 野口健 (アルピニスト) (@kennoguchi0821) March 27, 2017
つづく
「冬」よりも「春」の方が絶対的に 安全というものではない。特に雪崩のリスクは冬よりも春の方が高い。日本の山に限らずヒマラヤでも同じこと。4月〜9月の間に雪崩が多発する。確かに日本の高校山岳部では冬山登山を禁止している学校か多いとも聞きますが、季節で区切るのは意味があるのだろうか。
— 野口健 (アルピニスト) (@kennoguchi0821) March 27, 2017
高校山岳部に外部の登山家をコーチとして入れた方がいいでしょう。学校の先生方が皆が皆、もちろん登山家というわけではない。僕の知り合いですが、山岳部の担当になり慌てて登山道具を買っている先生もいる。つまり完全に素人なわけです。人命が関わる活動なだけにプロを入れた方がいい。
— 野口健 (アルピニスト) (@kennoguchi0821) March 27, 2017
野口さんが言っているように、今回の事件は防ぐことは出来たのでしょうか?
低気圧の接近、短時間に大量に降る雪、営業していないスキー場等、事故が起きやすい条件が揃っていたとも言われる中で強行された訓練。
営業していないスキー場は、ただの雪山であり、勾配がある斜面に積雪があれば、雪崩はどこでも起こりうると専門家は警笛を鳴らしています。
今回のように、まとまった雪が短時間で降れば、斜面は不安定な状態になり、雪崩が起きやすくなるのは想像出来たことだと言われていて、現場での判断の未熟さも今回の悲劇を生んでしまった要因に上げられています。
表層雪崩は、既に積もった雪の上に新雪が積もり、新雪の重みで滑り出すことによって発生する雪崩です。
特に、春先は日中に溶けた雪が夜間に凍って、固くなりやすく、新雪が積もっても、古い雪となじまず、境目が間にできます。
その為に、足を踏み込むなどした衝撃で「ドーン」と滑り落ちてしまう事があるといいます。
実際に、最初に現場に駆けつけた救助隊の方が、「きょうの雪であんなところに行くのは間違っている」とも語っており、認識の甘さが本当に悔やまれます。
※雪山における「弱層テスト」と「呼吸空間確保法」についても「こちらの投稿」で触れていますので、宜しければ併せて御覧ください。