雪崩注意報が出ていた中、栃木県那須町の雪山で、登山安全講習会に参加していた県立大田原高校山岳部の生徒や職員8名が、「ラッセル訓練中」に雪崩に巻き込まれて死亡してしまった事故。
主催者の県高校体育連盟登山専門部が、呼吸空間確保法(雪に埋まってしまった際に呼吸をする空間を確保する方法)や、弱層テストも怠っていた事が分かりました。
結果として、雪崩を想定せずに訓練を行っていた可能性があり、県警も慎重に関係者から事情を聞いています。
呼吸空間確保法や弱層テストと雪崩の関係
雪に埋まってしまった場合。雪の圧力で、短時間の内に窒息してしまう危険性が高まります。
流されている時に浮上を試みるか、口の周りを手で覆うなどして、呼吸が出来る空間を確保出来るかが、生存時間を延ばすポイントとなり、今回雪崩に巻き込まれてしまった生徒らは、この雪崩に対する対処法を知らないまま訓練に参加していたと見られます。
「呼吸空間確保法 イラスト」
また、雪の斜面は弱層という積雪内のもろい層が、表層雪崩を誘発しやすく、この危険を回避する方法として、数十センチ程掘り弱層があるかどうか確かめるというものがあります。
関係者によると、過去の講習会ではこの「弱層テスト」後に、ラッセル訓練を行っていましたが、今回のケースでは事前にテストが行われていなかったことが明らかに。
雪崩を研究している方の意見では、弱層はスコップで掘ればすぐに分かるものだとし、経験豊富な教員がいれば確認したはずだとコメントを残しています。
「弱層テスト イラスト」
弱層テストの方法や道具と別名は?
それでは「弱層テスト」について、詳しく見ていきましょう。まずは、必要な道具についてです。
- シャベル
- ルーラー
- スノーソー
- 傾斜計
- 雪温計
- 結晶拡大鏡
- ブラシ
- ノート
- ザイル(必要な時がある)
「ハンドテスト」
雪の表面に直径40cm、深さは最低70cm位の円柱を掘ります。上の部分から両手で、手首から腰までを順番に使って判断していく方法。
「コンプレッションテスト」
シャベルのブレードと同じ幅で、約80cm以上の四角柱を作ります。(スノーソーで切れ目を入れるだけの部分もあり)シャベルを一番奥側に両手を使って差し込み、手前に引く。
この時の力のかかり具合、柱の割れ方から判断する方法。
「ルッチブロックテスト」
幅2m、奥行き1,5mの鉛直なブロックを深さ1m程作ります。山側には、ザイルで切れ目を入れておき、静かにスキーを付けた人が上に乗ります。
それから、スキーを外した人が大きくジャンプしたときまでを、段階分けし判断する方法。
「まとめ」
いずれも、表層雪崩の危険性を回避するための方法として、雪山に関する知識としては基本だということですが、何故か今回に限って行われいなかったということです。事故後の会見で、顧問の方が「絶対に安全だと思っていた」と語っていましたが、このようなちょっとした過信が、大きな事故を巻き起こしてしまうという事を、忘れずにいたいです。